白と黒だけの模様を回転させると、赤や青、緑のような色が見えることがあります。代表例は「ベンハムのコマ」。実際の円盤には色がないため、見えている色は目と脳の処理によって生まれたものです。この現象は主観色と呼ばれ、約200年前から研究されてきました。

基礎生物学研究所などの研究チームは、過去の画像から次の画像を予測するよう学習するAIを使いました。自然や街を歩く動画を学ばせたあと、初めて白黒のコマの回転映像を見せると、AIが予測した画像にも淡い色が現れました。静止したコマでは、ほとんど色は出ませんでした。

さらに、学習させる動画を変えると現れる色も変化しました。赤・緑・青の四角形が動く単純な動画では、学習中によく動いていた色に対応する色が強くなりました。回転ではなく白黒の線を点滅させても色が出たため、円運動そのものより、明暗が時間とともに切り替わることが重要だと考えられます。

人間の見え方をAIが完全に再現したわけではありません。それでも、過去に見た『動きと色』の組み合わせから次を予測する働きが、存在しない色を生む手がかりになる可能性が示されました。白黒のコマは、まだしばらく研究者を回し続けそうです。