京都大学、東京大学、名古屋大学、米ライス大学などの共同研究チームが、カゴメ格子を持つ金属化合物CsCr₃Sb₅で、これまで見えていなかった電子の秩序を発見しました。カゴメ格子は、竹かごの編み目を思わせる三角形と六角形が並んだ構造です。その幾何学的な形から生まれる不思議な電子状態が、世界で盛んに研究されています。

この物質では従来、55ケルビン付近で一度だけ相転移が起こると考えられていました。研究チームが光電子分光や核磁気共鳴など複数の方法で調べると、それより高い64ケルビン付近にも別の相転移が存在することが判明しました。一つに見えていた変化の中に、二段階の動きが隠れていたことになります。

電子には電気的な性質である電荷と、磁石の向きに似た性質であるスピンがあります。今回の結果は、この二つが同じ合図で一斉にそろうのではなく、異なる温度で別々に秩序化することを示しました。同じカゴメ格子を持つ別の物質とも性質が異なり、格子の中で起こる電子秩序の多様さが見えてきました。

CsCr₃Sb₅は圧力をかけて電子秩序を抑えると、超伝導が現れることも知られています。今回の発見は、その仕組みを理解する手がかりになる可能性があります。身近なかごの模様に似た金属の中では、電荷とスピンが同じ集合時間を選んでいませんでした。