コーネル大学の研究チームは、光が表から入るか裏から入るかで見え方が変わる半導体薄膜を実証しました。試作品は一方から見ると「Y」、反対側から見ると「N」に見えます。薄膜は質問に答えているようですが、内容より先に見る位置を確認した方がよさそうです。

通常、レンズや鏡などの材料は、同じ条件なら光をどちら向きから通しても同じように反応します。これを光学的な相反性と呼びます。今回の薄膜では、まっすぐな方向に振動する光である直線偏光の吸収と発光が、進む向きによって変わりました。

材料はカドミウム硫化物、セレン化カドミウム、テルル化カドミウムの『マジックサイズ・クラスター』です。原子数が特定の大きさで安定する微小な粒子を、らせん状に自己集合させました。直線方向と円を描くように振動する偏光への二つの反応が重なることで、方向による差が生まれます。

これまで同様の機能には、複雑な人工構造や強い磁場が必要になることが一般的でした。今回は溶液から加工できる比較的単純な薄膜で示したのがポイントです。将来は、見る方向で内容が変わるホログラム、光の経路制御、暗号化への応用が考えられます。ただし現段階は材料実験で、表裏で意見が変わる看板の発売予定はまだありません。