米国の海洋生物学研究所で、海水に暮らす新種の単細胞生物が見つかりました。名前は『Stentor hondawara』。研究所前の海辺で採った海水を2023年に顕微鏡で見たところ、漏斗のような形のラッパムシが混じっていました。採集場所はほぼ玄関先ですが、生物学では十分に新大陸でした。
ラッパムシの仲間は大型の単細胞生物で、1744年の記載以来、主に池や川など淡水に住むと考えられてきました。汽水からの報告はありましたが、高い塩分の海水で暮らす種を現代的な手法で明確に確認したのは初めてです。研究者はDNAの全設計図である全ゲノムを比較し、既知の淡水種とは異なる新種だと確かめました。
海水対応の鍵の一つはアクアポリンです。細胞膜で水やグリセロールを運ぶたんぱく質で、この新種は独自の型を持ちます。塩分やpHの変化から細胞を守る分子に関わる遺伝子群も多く、細胞内にはビタミンB12を作り窒素を固定する可能性がある共生細菌も見つかりました。一つの細胞ですが、塩分対策の持ち物は少なくありません。
種名は、見つかった海藻群『ホンダワラ』に由来します。研究所の説明では、その名には『海の米』という意味もあり、日本では豊作を願う縁起物として扱われます。研究チームは現在、大量培養して世界の研究者が使えるモデル生物にする計画です。新種の名前は日本語、発見場所は米国、将来の勤務先は世界各地になりそうです。